「ひとり残された女(人)は」 ヨハネ8:1-11(Ⅱ)

Pastor Kitazawa

(音声メッセージは礼拝後にアップする予定です。)

①きょうは、先月の礼拝と同じ聖書個所、ヨハネの福音書8章を見てゆきたいと思っています。

・その前に、先ずは、先月同じ個所を取り上げた、その礼拝に出席できなかった方のために、その時の礼拝メッセージの内容を簡単に振り返ってみたいと思います。

・ヨハネ8章に記されているこの出来事は、主イエスが朝早くエルサレムの神殿の中で、人々にいのちのことばについて教えておられた時に起こりました。

・突然、パリサイ派と呼ばれていた人たち数人が、姦淫の現場から連れ出した一人の女の人を連れてその場に入って来たのです。

・そして彼らは、イエスさまに向かってこう言うのでした。「旧約聖書では、このような女を石打ちの刑に処すべきと言っていますが・・あなたは、何と言いますか・・。」

・すると、主イエスは、その問いには答えず、身をかがめ、地面に指で何かを書き始めるのでした。

・しかしそれでも尚、彼らは、問い続けてやめなかったので・・主イエスは、身を起こし、このように彼らに答えます。「あなた方のうちで、罪のない者が、最初に彼女に石を投げなさい。」

・この御言葉が響くと・・そこにいたパリサイ人と律法学者たちは・・動揺し・・沈黙しまいます。そしてしばらくすると・・一人また一人と、年長者から始めその場から消えていくのでした。

・どうしたことでしょう・・。そうです。彼らは、心の中でこう思ったのです。「これは、まずい事になってきた。これ以上ここに居ると、自分たちの罪が明らかになってゆくかもしれない・・そうだ、ここは一旦退いた方がいい・・」

・そういうわけで、ついには誰もがいなくなってしまったのでしたが・・・一人だけ、そこに残った者がおりました。 そうです。それは、姦淫の現場から連れてこられたその女の人でした。

②きょうは、その女の人に焦点を合わせてみたいと思います。

・それにしてもなぜ、この時、彼女だけが、ぽつんとそこに残っていたでしょうか・・

・先ほど申しましたが、この場から消え去っていった者たちは、恐れたのでした。己の罪のその現実があからさまになってしまうことをです。

・しかし、よく考えてみますと・・ここに残ったこの女の人だけは、罪なる自分の本当の姿を隠すその必要がありませんでした。

・ですから彼女は・・己の罪を隠すためにここから逃げ出す、そのような必要もなかったのです。

・彼女は、そのことより、今、彼女は、イエスさまに、これから自分はどのように生きていったらよいのか、そのことを聞きたかったに違いありません。

③10節11節を見ますと、先ほどまでパリサイ人や律法学者たちには目を背けておられた主イエスは、この女性には、今、正面から向き合って、このように語り掛けたのでした。「女の人よ」・・

・他の日本語訳聖書では「婦人よ」となっています。これはこの時のイエスさまの女性への呼びかけが、とても丁寧な言葉であったことを表している翻訳です。

・そして、主イエスは続いてこのように語られます。 →「女の人よ。彼らはどこに居ますか?だれもあなたに裁きを下さなかったのですか?」

・これは勿論、さっきまでここに居た人たちはどこかに行ったのですか・・まだその辺に残っているのですか・・そのような物理的な事を聞いているのではありません。

・イエスさまが聞いておられるのはこうです。「あなたを裁いていた人たちは、どこに居ますか・・もう誰もいない・・そうではありませんか・・」

・それに対して、この人はこう答えます。→「はい、主よ。だれも・・」

・つまり、彼女は「私を裁いている人は誰もいません。」と言うのでした。

・この人のこの返事・・みなさんはどのように思われるでしょうか・・私はこの女性のこの返事に驚きを覚えるのです。

・私は50年程牧師と言う立場にあって、人からひどい非難をされたいろいろな方からの相談を数多く受けてきました。・・しかしこのような反応をされた方にお会いしたことがありません。

・普通は、多くの人に非難されてきた方は、心を痛めています。そして、先ず、自分がいままでどれほど多くの人が自分にひどい言葉を掛けてきたのかについて訴えてこられます。これが普通のことです。

・ですから、この場面でこの女性は、こう言ってもよかったのです。「イエスさま。今見ていたでしょう。みんなが私のことを非難しているのです。汚い女だ!お前のような人間は最低の人間だって・・ひどい事を言うでしょう・・」

・ところが・・この女性はそのようなことをまったく申しませんでした。

・彼女はイエスさまにこう答えたのでした。「私を裁く人ですか? だれもいません。」

・そうです。この女性は、人からの自分への非難にはあまり関心がなかったのです。人の目を気にしながら生きている日本人たちには少々驚きです。

・私は、彼女のこの反応はすごいと思います。すばらしいと思うのです。つまり、この人は、人にどう見られているのか、そういうことよりも、今、目の前に立っておられる主イエス・キリスト、その方の眼差し、この方の御心が知りたかったのでした。

・この彼女のこの世記の返事を聞いたイエスさまは、こう言われるのでした。「わたしもあなたに裁きを下さない」

・そして、イエスさまは次に、こう言われます。「行きなさい!」 勿論、これはどこかに出掛けて行きなさいという意味ではありません。「これからの新しい人生に向かって、あなたは進んでゆくのです!」という励ましの御言葉です。

・そして、イエスさまは、この女性に最後にこう付け加えるのでした。「これからは、決して罪を犯してはなりません。」

・私は、ここに・・私たちの主イエス・キリストのすばらしさが輝いている・・そう感じ取り、激しく感動させられるのです。

④ところで・・この時のイエスさまのこの女性への対応を、みなさんはどのように思われるでしょうか・・

・ある方はこのイエスさまとこの女性のやり取りを見て、このように思われるかもしれません「少し道徳的に生ぬるいのではないか・・どうして、イエスさまは、この人にもっと厳しい倫理観を教えなかったのか・・これでいいのだろうか・・」

・いや・・私は思います。 これでいい・・これだからすばらしい・・そう思うのです。

・もし、この時、主イエスさまがこの人にもっともっと厳しい罪の指摘をされて・・話がこの人の原罪にまで及ぶとしたら・・その場合、イエスさまのお示しになった福音による救いは崩壊してしまうからです。

・そして、主イエスの語られた宣教は、神さまの哀れみ、神さまの赦し・・神さまの愛ではなくなり・・一つの道徳ということになってしまいます。

・そして私たちの信仰も、福音を信じるという信仰ではなくなり、一生懸命道徳に励む、という重苦しい修行の日々にすり替わってしまうでしょう・・

・しかし主イエス・キリストのお与えになられるその救いは・・主イエスご自身の、その身代わりよる救いなのです。

➄私たちはきょうヨハネ8章に記されているこの出来事を観てきたのですけれども・・このヨハネ8章の主イエスの姿こそ、実にイエスさまらしい・・私はそう思います。

・と同時に、もう一つ・・ここに連れて来られた名もない一人の女性・・、人々から後ろ指をさされつつ、貧しさと闘い・・やもなく、身を売って生きていた一人の女性もまたすばらしい女性であったということも忘れてはいけない。そう思うのです。

・この女性は、イエスさまから、「あなたを裁く人はどこにいますか」と聞かれた時・・「誰も居ません」と言いました。考えてみますと・・本当にこういう心の人がいるのだろうかと思う程に、この人の心は純真だと思います。

・この人の、この返事を聞いた、イエスさまのその時の思いは・・「よし!」といいましょうか・・。この時、イエスさまは確信したに違いありません。
→「この人なら・・再生する!・・」

・歴史的御言葉が語られたのはその直後でした。11節「わたしもあなたに裁きをくださない」

・イエス・キリストは、この姦淫の女の人に、ご自身の口から直接、福音のことばを宣言したのでした。もしかしたら・・イエスさまご自身から、これほどまでに、福音そのものを直接宣言されたのは・・彼女が初めてだったかもしれません。

・勿論、ニコデモや、サマリアの女も・・それに似ていますが・・ これほどまでに罪の赦しを正面から宣言されたのは・・この人が最初ではないか・・そう思います・・。

・では12弟子たちはどうだったのか・・おそらくは、未だ語られていなかったでありましょう・・。・また、たおえ語られたとしても、彼らは全然理解できていなかったでありましょう・・まあ・・それは、それとして・・

・私たちは、この11節の罪の赦しの宣言を読みますときに、・・聖書を日々読んでいる多くの人が別の箇所で語られた、あの主イエスキリストの御言葉を思い起こすのではないでしょうか・・。

→「私は正しい人を招くためではなく、罪人を招いて、悔い改めさせるために来たのです。」マルコ2:17 ルカ5:32 マタイ9:14 の御言葉です。

・私たちには多くの信仰の教師がおります。 ある人は、使徒パウロこそ我が教師と言うべきでしょう。 ある人はヘレンケラーこそ我が教師・・そう言われるかもしれません。

・そうです。私たちは、たくさんのすばらしい信仰の教師たちを知っています。そして、その生き様から大きな励ましを受けています。

・その私たちの良きき教師の一人に、ヨハネの福音書8章に出来てきたこの女性も、加えてもいいのではないか・・そのように私は思うのですけれども・・皆さんはどう思われるでしょうか・・

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